歯周組織再生療法
- 歯周病によって破壊された部分の歯ぐきを開き、歯石や細菌を徹底的に除去。
- メンブレン（生体吸収性の膜）を設置し、不要な歯ぐきの侵入を防ぎながら、歯槽骨や歯根膜の再生を促す。
- 数ヶ月後、メンブレンが吸収され、歯周組織が再生する。
- 歯周ポケットの奥深くを清掃し、細菌や歯石を除去。
- エムドゲインゲルを歯根表面に塗布。
- 時間の経過とともに、歯周組織の再生が進行。
- 歯周病で破壊された組織の細菌や歯石を取り除く。
- リグロスを患部に塗布。
- 成長因子の作用で、歯周組織の再生が促進。
歯周病が進行すると、歯を支える歯槽骨や歯根膜が破壊され、最終的には歯を失うことになります。
一度失われた歯周組織は自然に回復することは難しく、再生療法を用いることで、歯の寿命を延ばすことが可能になります。
当院では、GTR法・エムドゲイン・リグロスといった歯周組織再生療法を行い、できる限り歯を残すことを目指しています。
歯周組織再生療法の必要性
歯を失うリスクを減らすため
歯周病が進行し、歯を支える組織が減少すると、最終的に抜歯が必要になります。
再生療法によって歯周組織を回復できれば、抜歯を回避できる可能性が高まります。
噛む力を回復させるため
歯周病が進行すると、歯がぐらついたり、噛む力が低下したりします。
再生療法を行うことで、歯の安定性が向上し、しっかり噛めるようになることが期待できます。
見た目の改善のため
歯ぐきが下がると、歯が長く見えてしまうため、審美的な問題が生じます。
再生療法によって歯ぐきを回復させることで、自然な口元を取り戻すことができます。
歯周組織再生療法のメリットとデメリット
メリット
歯を残せる可能性が高まる
歯ぐきや骨の回復により、歯のぐらつきを抑えられる
噛む力が回復し、食事がしやすくなる
見た目の改善につながる
比較的自分の組織を活かせるため、インプラントなどの人工物よりも違和感が少ない
デメリット
治療期間が長い（数ヶ月〜1年以上かかることも）
すべての患者さんに適応できるわけではない
治療後も歯周病予防を徹底しないと再び悪化する可能性がある
保険適用外の治療も多く、費用がかかる場合がある
当院で行っている歯周組織再生療法
GTR法（歯周組織再生誘導法）
GTR（Guided Tissue Regeneration）は、「組織再生誘導法」とも呼ばれる治療法で、歯周病によって失われた骨や歯根膜を再生させるために、特殊な膜（メンブレン）を使用する方法です。
歯周病が進行すると、歯の周りの組織が破壊され、その隙間に歯ぐきが入り込んでしまうことで、骨の回復が妨げられます。
GTR法では、人工の膜を挿入することで、歯ぐきが入り込むのを防ぎ、その間に歯槽骨や歯根膜が再生しやすい環境を作ります。
一定期間が経過した後に膜を除去することで、より安定した骨の回復を促します。
この方法は、特に骨が部分的に失われた症例や、比較的若い患者さまに適していると言えます。
しかし、術後の管理が重要で、感染リスクを抑えるために適切な口腔ケアが求められます。
手順
この方法により、本来なら再生しにくい骨や歯根膜の回復を促すことが可能です。
エムドゲイン（歯周組織再生材料）
エムドゲイン法は、スウェーデンで開発された歯周組織再生治療のひとつで、歯が生えてくるときに働くたんぱく質（エナメルマトリックスデリバティブ）を利用し、歯周組織の再生を促す治療法です。
まず歯周病で失われた部分を徹底的に清掃したうえで、エムドゲインゲル（たんぱく質を含む特殊な薬剤）を塗布します。
このゲルは、歯の発生過程を再現し、歯根膜やセメント質、歯槽骨の再生を促進します。
エムドゲインの最大のメリットは、GTR法のように人工の膜を使わないため、異物による炎症のリスクが少なく、治療後の違和感が少ないことです。
また、骨の回復だけでなく、歯根膜やセメント質の再生も期待できるため、より自然な組織の再生を促せる点も特徴です。
ただし、すべての症例に適応できるわけではなく、広範囲に骨が失われたケースでは、他の治療法と併用することが推奨されることもあります。
手順
エムドゲインは、自然な組織の回復を促すため、体への負担が少なく、成功率が高いのが特徴です。
リグロス（歯周組織再生促進剤）
リグロス法は、日本国内で開発された再生療法で、厚生労働省によって保険適用が認められた数少ない歯周組織再生治療のひとつです。
リグロスは、「bFGF（塩基性線維芽細胞増殖因子）」という成長因子を主成分とする薬剤で、歯槽骨や歯根膜の細胞の増殖を促進し、組織の再生を促す働きがあります。
治療の流れはエムドゲインと似ており、歯周病によって失われた組織を清掃した後に、リグロスを塗布して治癒を促します。
リグロスの最大の特徴は、日本国内で安全性と有効性が確認されており、保険適用が可能であることです。
比較的費用を抑えながら再生療法を受けることができるため、多くの患者さまにとって選択しやすい治療法となっています。
ただし、GTR法やエムドゲイン法に比べると、重度の骨欠損への適応には限界があるため、症例によっては他の治療法と組み合わせることが推奨されます。
手順
リグロスは、日本国内で保険適用されているため、比較的治療費を抑えながら再生療法を受けることが可能です。
どの再生療法が最適か？
GTR法・エムドゲイン・リグロス、それぞれに特徴があり、症例によって適応が異なります。
部分的な骨の欠損がある場合や、確実に骨を再生させたい場合 → GTR法
より自然な形で歯周組織全体を再生させたい場合 → エムドゲイン
保険適用で費用を抑えつつ、一定の再生効果を得たい場合 → リグロス
再生療法は、歯周病によって失われた歯周組織を回復させることができる治療法です。
GTR法・エムドゲイン・リグロスなどの方法を活用することで、歯を残せる可能性が高まります。
しかし、治療期間が長く、すべての方に適応できるわけではありません。まずは歯科医師に相談し、ご自身の状態に適した治療法を検討することが大切です。
当院では、患者さま一人ひとりに最適な治療を提案し、歯を長く健康に保つサポートをいたします。歯周病でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
